コンクリートを見せたお部屋憧れる。最近リノベーションでよく見かける天井や梁のコンクリートを見せたお部屋が増えてきました。コンクリート独特の雰囲気があっていいですよね。
コンクリートを見せることを「躯体現し仕上げ」または「コンクリート現し仕上げ」と言います。
躯体現し仕上げにも、守るべきポイントがあります。この守るべきポイントを守らなければ、住んだ時に大きく後悔することにもなります。そうならない為にこれから躯体現し仕上げでの守るべきポイントを説明していきます。
まずは躯体現し仕上げの基礎知識
躯体現し仕上げは、見せる為の仕上げではない。という事をまずは知っておきましょう。天井のコンクリート部分は、上階の床を支える為にあるもので、室内に見せるという想定で作られていません。
室内のクロスなどで隠れる事を想定して作られている為、コンクリート自体綺麗に仕上げている訳ではありません。
その為少しボコボコしていたり、当時の工事中の指示事項などが書かれている場合があります。
リノベーション後に、この上から塗装などしても決して綺麗に仕上がるという事はありません。しかしこういうちょっと味のある仕上げが魅力的な部分でもあったりします。
解体して初めて解る事も多々・・・
元々の天井や壁で隠れている訳ですから、実際に解体してみないと目で見る事ができません。いざ解体してみると、大きなヒビや亀裂・汚れなどがある場合があります。
汚れは長年蓄積されたものになるので問題ありませんが、大きなヒビや割れは、建物に重大な影響を及ばす可能性があります。もし解体した時に、大きなひびや割れが見つかった場合は、すぐに工事を中断し、担当の設計士さんや管理組合さんに報告する事が大事です
躯体現し仕上げは何処でもしてよいという事ではありません
躯体現し仕上げをしている、リノベーションの事例などをインターネットなどでみていると、間違った使い方をしている所もあります。これは提供している側の、知識の無さと今流行りという所から起こる問題点です。
躯体現し仕上げとしてはいけない所が、2つあります。この2つの箇所を躯体現し仕上げにしてしまうと、住んで行くににつれ、結露やカビといった問題が、発生してきますのでもしこの部分を「躯体現し仕上げ」にと今お考えの場合は、中止すべきです。
外気に面する壁
外気に面する壁に、躯体現し仕上げとすると「結露」の原因になります。コンクリートは、暖めにくく冷めにくいという性質があります。
夜の冷気で冷やされた外周面に面する壁は、朝になってもなかなか冷めず室内で暖房などで暖められた空気と衝突し結露を発生させます。
また夏場では、昼間の太陽により暖められた外周面は、夜になっても冷めず、サウナ状態になってしまいます。この為、外周面に接する壁をコンクリート現し仕上げにすることは、住めない家になってしまいます。
最上階の天井
最上階の天井は、上に住戸が無いため太陽の熱を直接受けています。その為マンションでは、最上階の天井裏には、必ず「断熱材」が施工されています。この断熱材を無理やり取って躯体現し仕上げにしてしまうと、
夏場はサウナ、冬は極寒
になりとても住める家ではなくなってしまいます。
上記の2点は、建築の知識がある方なら誰でも理解しておりこれらの箇所を「躯体現し仕上げ」の提案をするリノベーション業者さんは、「知識がない」という事なので注意が必要です。
防埃処理はきちんとしましょう!
躯体現し仕上げにする時のもうひとつの注意ポイントが、「長年の埃」です。解体した時の埃はほぼ落ちますが、中には小さな埃もコンクリートにこびり着いたままの物もあります。またコンクリートは、粉もたびたび落ちてきます。
生活をしていくと、振動や衝撃で粉や埃が落ちてくる。といった事もごくまれにあります。その為これらを最小限に抑えるために「防埃塗装(ぼうじんとそう)」というのを必ず施工業者などにお願いしましょう。
防塵塗装をしないリノベーション業者さんがほとんどです。これも建築の知識がある方なら必ずするところですので、もしコンクリート現し仕上げを考えている場合は、一度業者さんに聞いてみることをお勧めします。
湿気も考える必要あり
躯体現し仕上げの最大の天敵は、「湿気」です。よくSNSなどで部屋全部がコンクリートのお部屋を見たことがあるとおもいます。写真でみると「雰囲気良いな」とか「素敵」というのが印象です。
でもコンクリートだらけの部屋に住まれている方のほとんどが、加湿器が必需品。
コンクリートはものすごく部屋が湿気ます。部屋全部をコンクリートにしてしまうと湿気との闘いです。その為コンクリートの表しのお部屋にしたい場合は、天井だけとか一部の壁のみとするのが鉄則です。
躯体にはボンド跡やクロスの跡なども残ります
コンクリートの天井や梁を見せる仕上げで必ず残るのが「ボンド跡とクロスの跡」です。中古マンションでは、このコンクリートに直接クロスやクロスの下地となるボードを貼る方法が多々採用されています。
これを「GL工法」といいます。GL工法のマンションで、躯体現し仕上げにした時には「ボンド跡とクロス跡」が残ってきてしまいます。
工事中にみると少し気になる方が多いのですが、完成後に照明器具などを付けてみるとこういった部分も「味」となって行きます。
このクロス跡やボンド跡は、多少は取る事ができますが綺麗に取ることはできないので気になる方は、塗装という方法があります。
躯体現し仕上げにした事例「神戸市垂水区O様邸」 「神戸市須磨区K様邸」
躯体現しにすると防音性能は落ちる?
躯体現しにすると防音は大丈夫?と心配ではないでしょうか?躯体現しにしたからと言って防音性能は落ちることはありません。
天井のコンクリートの厚さは200mmや180mmといった厚さがあり、更に上の階の床は管理規約で決められた防音性能の床材が使われている為、躯体現しにしたからと言って防音性能は落ちません。
躯体現しにすると露出配管になる
躯体現し仕上げにすると電気の配線は、「露出配管」という配管方法になります。通常電気の配線は、天井や壁の内側に配線されるので見えないです。
しかし躯体現し仕上げにすると、この配線が隠せないので配線が見えてきます。ここで問題が、配線をそのままむき出しのまま配線するとあまりにも不細工。
そこで配線を隠す役割が、「鉄管」という材料になるわけです。
配線を隠す材料は、なにも鉄管だけとは限らず鉄管以外も使う事があります。
この字の形をしたアングルと言われる材料を使って配線を隠すときもあります。特に配線の本数が多い時は鉄管では通せない時があるので、そういう時はこういった材料を使います。
鉄管もアングルも塗装することもできるので、好みにあわせてそのままか又は塗装するかを選べます。
躯体現し仕上げはコストも削減できる
躯体現し仕上げにすると、天井を作る必要がなくなるのでコスト削減になります。部屋の天井は、木組んで下地を作ります。そして石膏ボードと言われる物が張られて、クロスなどが張られます。
躯体現し仕上げにすると、木の下地を組む必要もなくなり石膏ボードも張らないのでその分コストが削減できます。
ワンポイントアドバイス
躯体現し仕上げに塗装すると、塗装の工程が増えるのでコスト削減にはあまりならないです
躯体を塗装仕上げにするという方法もあります
クロスやボンド跡が気になる。という方には、「塗装」という方法があります。コンクリートの質感や素材感は残したいけど跡が気になる。そういったときには「塗装してしまう」という方法をおすすめします。
塗装をしてあげるとコンクリートの質感はそのままで、ボンド跡などは消えてしまいます。ただコンクリートのボコボコ感や欠けなどは塗装仕上げにしても消える事はありません。
塗装仕上げにする場合の大きなメリットは、コンクリートをそのまま見せた仕上げより、少し部屋が目の錯覚により広く見えることがあります。
コンクリートに塗装仕上げとした事例「明石市Nさん邸」
ルールを守ってあげれば魅力的な仕上げ
躯体を見せた仕上げは、最近注目されてきましたが、昔からお店などでは頻繁に使われていました。カフェやちょっとお洒落な雑貨屋さんなどでみかけたことありませんか。
ただ住宅で使うには、あまり綺麗な仕上げでないので、どちらかというと住宅には不向きという考えから敬遠されてきました。
しかし昨今、綺麗な仕上げだけが仕上げではなく、ちょっと味のある仕上げ方法を魅力に感じる方や元々コンクリートのもつ質感が好きな方や天井を作らずに出来るだけ部屋を開放的にみせたいと思う方が増えてき、住宅でもコンクリートを見せる仕上げが使われる様になってきました。
人気になると必ずおこるのが、「まちがった使い方」です。コンクリートを見せる仕上げ方法は、天井を高くみせたり、天井をつくらないのでコスト削減にもなりますが間違った使い方をすると、暑かったり寒かったりと「住めない家」になってしまう場合もあります。
これらが起こる原因は、建築の知識がないリノベーション業者が「単にはやりだから」や「お客さん受けがいいから」などといった、自己都合の理由ばかりです。
昨今のリノベーションブームにより、見栄えばかりを追求し本来このような仕上げをするときは、クロス仕上げの時よりも「建築の知識」が必要になってきます。
しかし今のリノベーション業界は、元々は「インテリア関係」や「不動産関係」を主としていた業者さんがほとんどです。そのため、マンションの構造や戸建て住宅の構造などをきっちりと理解していない。
という事があり、本来コンクリートを見せた仕上げには向かないところまで、このような仕上げにしてしまっています。
コンクリートを見せる仕上げを取り入れる場合は、ルールをしっかり守ってあげる。
ルールさえしっかりと守ってあげれば、魅力的な仕上げ方法のひとつです。しかし必ずメリット・デメリットが存在します。メリット・デメリットをしっかり理解した上でコンクリート現し仕上げを取り入れるというのも、マンションリノベーションの醍醐味です。
まとめ
今回のおさらい
- 躯体現し仕上げをする時は、下処理をきっちりとする
- 躯体現し仕上げは、外壁に面する壁と最上階の天井にはダメ
- 躯体現しにするとコスト削減にもなる
- 流行りになるほど間違った施工が起こる
マンションのリノベーションでよく見かけるようになってきた、躯体現し仕上げについてご説明してきました。躯体現し仕上げは、魅力的ですがその分無知なまま施工してしまうと大変なことも起こる仕上げのひとつです。
ご説明してきた内容を守りながら、ぜひ取り入れて魅力のあるマンションリノベーションにしてみては如何でしょうか。
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